ドーハ・ラウンドも交渉難航
APECは、WTOのドーハ・ラウンドの年内大枠合意も“誓約”したが、来年1月の米政権交代を前に難問の解決は至難の業だ。WTOのラミー事務局長は同日、12月中旬の閣僚会合に向けて調整作業の本格化を表明したが、各国政府は自由貿易体制の推進よりも、米国発の金融危機によって疲弊する自国産業の支援に向かいかねない情勢にあり、合意に向けた壁は高い。
APECは世界が保護主義化するとの懸念から、自由貿易体制を推進するドーハ・ラウンドの合意に向けて強い意志を表明。22日の特別声明では、ドーハ・ラウンドの年内大枠合意について「来月に達成することを誓約する」とうたい、12月に閣僚会合を開くよう求めた。首脳宣言でも「迅速かつ野心的でバランスのとれた妥結を支持」するとした。
しかし、ドーハ・ラウンドをめぐる交渉は7月の閣僚会合が決裂して以降「進展していない」(交渉筋)。特に米国と中国、インドが対立し、決裂要因となった緊急輸入制限(セーフガード)の発動条件をめぐっては「後退している」(同)との声が聞かれるほどだ。
急展開を予期していなかった日本にも譲歩の準備はない。交渉のたたき台となってきた農産品の調停案では、高い関税率が容認される「重要品目」の割合を「最大でも6%」としており、政府は「(8%の)主張が最大限反映されるよう努力」(石破茂農水相)するのが精いっぱい。鉱工業品分野で関税引き下げを求められてきた途上国も、世界経済が冷え込む中で応じるのは困難な情勢だ。
各国は“総論”としてドーハ・ラウンドの推進に賛成。WTOは24日から主要30カ国・地域の政府高官が連日の交渉に臨む。しかし、7月の閣僚会合で決裂の要因となった米政権は来年1月、自由貿易体制の堅持をとなえた共和党のブッシュ政権から、ビッグスリーの救済を強く求める民主党のオバマ政権に代わる。
しかも、米国の交渉担当者は、来年1月の政権交代とともにいなくなる。国際経済法が専門の田村次朗慶応大教授は「強いトーンの声明を出さなければ意味がないということだろうが、米国以外の交渉担当者からすれば、今の米国の担当者が約束しても政権交代後にほごにされる懸念を持つ。各国とも自国の産業界を守りたいという意向があり、合意に向けた譲歩は簡単ではない」と、交渉の難航を予想する。(飯塚隆志)
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